また今年もベランダで蝉が死んでいる。
毎年一匹ずつ。
律儀に。
最後のちからを振り絞って、わざわざ高く飛んで死にに来る。
今日は風が強いから、洗濯物を取り込んだ時には、干した時よりも少し移動していた。
もしかしたら生きているのではと気持ち悪くなる。
道に落ちている蝉の死体は、蹴るとジーと鳴いてロケットのように飛んで行く、という街談巷説もある。
そういえばお盆時期か。
だとしたら、つまりこういうことだ。
美少女の霊的な何かが、毎年蝉の身体を借りて私に会いに来る。
けれども夏も盛りのこの時期、冷房をつけるための窓は閉め切られていて、ガラスにぶつかってちから尽きる。
風に煽られてふるふる、ふるふると、蝉の軽い身体は左右に身を揺らしている。